ロック

The Beatles - Let It Be(1970)

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先週、友人と飲みに行った際、その席でビートルズの話になった。友人にビートルズのベスト・アルバムを訊ねるとレット・イット・ビーという答えが返ってきた。

意外だなあ、と思いその理由を尋ねると彼はこう答えた。

「うーん。上手く言えないけど『崩れ落ちる感じ』が美しいんだよね」。

彼は同じ理由で尾崎豊のベストアルバムは「街路樹」だとも言っていた。

さて、本作レット・イット・ビーはビートルズが最後にリリースしたアルバムである。レコーディング自体はアビー・ロードの方が後だけど、一般的には「レット・イット・ビーがビートルズ最後のアルバム」という認識が強いと思う。

確かに友人の言うとおりこの作品には、そこはかとない儚さがある。サウンド自体はアメリカ南部寄りのルーツ志向の強いアルバムだけれど、リラックスした雰囲気はなく、逆にもの悲しさを感じる。

本作のレコーディング風景を撮影した映画も観たけれど、こんなんで本当にアルバムが作れるのだろうかと心配になったほどだ。

歌詞についてもそうだ。ジョージの歌うI Me Mineでは「僕が、僕が、僕が、こればっかり」、タイトル曲Let It Beでは「なすがままにまかせなさい」。

極め付けはGet Backだ「戻っておいで、戻っておいでよ、お前がいた故郷へ」。

僕はこの歌詞は「リバプールにいた、あの頃に戻ろう」という、もはやとうてい叶わないメンバーの悲壮な願いではないかと思っている。

楽曲がシンプルなのもそのせいだと思う。Dig a Pony、Dig It、Maggie Mae、I've Got a Feeling、For You Blue。ほとんど3コードの曲ばかりだ。

ここには天才音楽集団、ビートルズの姿はもうない。ただただ単純なロックナンバーを奏でる「普通のロック・バンド」の姿があるだけだ。

それでも本作レット・イット・ビーがやはりビートルズの作品としてかろうじて成立しているのは、ジョンの歌うAcross the Universeの存在が大きいと思う。

「何ものも、僕の世界を変えることはできない」と歌うジョンの姿には、何かすべてを悟りきった印象を受ける。

ポールも最後の最後でThe Long and Winding Roadという壮大で美しいバラードを残している。

本作レット・イット・ビーはビートルズの作品のなかでも評価が低い。しかし、友人の言った「崩れ落ちる美しさ」という点ではナンバーワンの作品であると思う。

松尾芭蕉の句に日本人が感動するのは、まさにこの感覚なのではないか。

どうも僕たち日本人の感性とやらは、こういう感覚に弱いらしい。







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