ロック

BECK - ODELAY(1996)

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ベックという人はルーツが見えない。普通のアーティストだと、いい意味でも悪い意味でも「ああ、この人はあのバンドやあのアーティストのフォロワーなんだな」と何となく想像がつくんだけど、本作オディレイにはどこにもそれがどこにも見当たらない。

もちろんヒップ・ポップがルーツにあるのは聴いてて分かるんだけど、バックトラックにブルースのスライドギターをサンプリングしたHotwax 、カントリーミュージックにファズギターを乗せ、おまけにタッピング(ギターの奏法です。普通はメタルの人がやります)までやっちゃう Lord Only Knows。その他、ゼムやボブ・ディランの曲サンプリングしたりと、とにかく一筋縄ではいかないんだよね。

考えてみるとカート・コバーンが夭折したのが1994年でしょ。グランジが終焉を迎えて、アメリカのミュージック・シーンはグリーン・デイの大ヒットくらいしか話題がなかった。

そこにベックが登場した。グランジ後の音楽で何ができるのか。「もうポップ・ミュージックのアイディアは出尽くした」なんて声も聞かれるなかで。

でもベックは革新的だった。最初に書いた「一筋縄ではいかない」というのはそういう意味だ。

ポップ・ミュージックの歴史を総括して、フォーク、ブルース、パンクなどさまざまな要素をつなぎ合わせる「引用と編集」という手法。これを本作オディレイでベックはプロデューサー・チームのダスト・ブラザーズの力を借りて、見事にやってみせた。

それは自室にこもった宅録大好き少年が想像上のポップの世界で大冒険を繰り広げているようだ。

本作オディレイでもブルースやカントリー、フォーク、ソウルからエレクトロニカ、ヒップ・ポップまで、さまざまな時代の音楽から集めてきたサンプルの断片を色彩豊かにコラージュして、現代風の味つけがなされている。

編集のセンスという点から見れば、オディレイはロック史上屈指の1枚だと思う。それは編集の時代だった90年代半ばのロックの傑作であることを意味する。

「今まで誰も聴いたことのない手法」という言葉を60年代に置き換えると「サージェント・ペパーズ」に行き着く。

オディレイはその革新性という意味では「90年代のサージェント・ペパーズ」と言っても、言い過ぎではないと思う。







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