ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティはザ・キンクスの通算7作目のアルバム。本作はイングランドの田舎に暮らす人々を題材に、郷愁を込めて描くコンセプト・アルバムである。
ぶっちゃけ、本作ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティは商業的には失敗に終わった作品である。本作がリリースされたのは1968年。サイケデリック・ムーブメント真っ盛りのこの時代に「村の緑を守ろう」というコンセプトはあまりにも時代とかけ離れていたせいだと思われる。
それでも、このヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティを紹介するのは、本作がThe Kinksの「隠れた名盤」だからである。とにかくいい曲が揃っているアルバムなんです。
まずは1曲目のThe Village Green Preservation Societyで「僕たちは村の緑を守る会」の声明文が歌われ、アコースティックなR&RナンバーPicture Book、ジョニー・サンダースのステージネームの由来となったJohnny Thunder、ハウリン・ウルフの影響が窺がえるブルースナンバーLast of the Steam-Powered Trains、感傷的なメロディーラインを持ったVillage Green、ポップでキャッチーなStarstruck、デイブがボーカルをとるファズギターが炸裂するサイケ・ナンバーWicked Annabella。聴いてもらえれば分かると思うけど、名曲がたくさん詰まったアルバムだ。
サウンドは全体的にアコースティック・ギターが用いられ、全体的にのんびりした牧歌的なムードを漂わせている。
このへんが全米ビルボードで200位圏内にも入らなかった理由なのかもしれない。1968年という時代に何てのんきなアルバムなんだと思われたのかもしれない。
レイ・デイヴィスはイギリスの詩人ディラン・トマスという人の「ミルクの森で」という詩集に強い感銘を受けて、本作ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティを作ったという。
確かにヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティは売れなかった。だけど、時代に流されることなく、自分の表現したいことを第一に考えるレイ・デイヴィスという人は、やっぱりひねくれ者だと思うし、同時に誠実な人だなと思う。
現代のアーティストやバンドで、こういうスタンスで表現活動を続けていくことは困難だ。色々と「大人の事情」も絡んでくるだろうし。特に日本の音楽はそれが顕著だと思う。そこから自由な人ってひょっとしたらボブ・ディランくらいじゃないかな。
ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティはそうしたしがらみから離れた、ザ・キンクスの名盤だと思います。未聴の方はぜひチェックしてみて下さい。
ザ・キンクス
価格: 2,100円
posted with sticky on 2017.9.19
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