ロック

Lou Reed - New York(1989)

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ルー・リードのニュー・ヨークは1989年にリリースされた。サウンドはギター2本にベースにドラム。シンプルな編成だ。

楽曲もシンプルなものが多い。たぶんルー・リードはこういうアルバムをずっと作りたかったのではないかと思う。語り口調のシンプルなロックン・ロールを。

本作ニュー・ヨークで注目されたのはルーの書いた歌詞の変貌ぶりだ。その象徴がThere Is No Timeだ。同曲の中でルー・リードはこう歌っている。

「そっぽを向いてラッパ飲みをしたり、クラックを吸ったりしている時じゃない。力を集め、最後の目標に向かって政策をしかける時なんだ」

僕の友人はこの曲を聴いて、ルー・リードから離れていった。人の道を説くなんて、ルー・リードも終わった、と。

しかし本当にそうなのだろうか、本作ニュー・ヨークの中でルー・リードは戦争で片腕を無くした男、DV、エイズや人種差別や中絶、ローマ法王や政治家たちに強烈な告白の歌を歌っている。

それは「ルー・リードが単純に社会意識に目覚めた」という単純なものではないと思う。

ルー・リードがヴェルベッツで登場したとき、当時のアメリカのミュージシャンはヒッピーの「愛と平和」の幻想に酔いしれていた。そこにルー・リードはヘロインやSMなど、社会の暗黒部にわざと光を当て、人生の本質を鋭くえぐり出そうとした。

本作ニュー・ヨークがリリースされたのは1989年だが、当時も今もアメリカをとりまく環境は光を当てるまでもないほど悪化している。ロックに真のリアリティーを求め、それを実践してきたルー・リードが、現実の悲惨さを直視し、それを歌にするのは当然の事ではないだろうか。

ルー・リードは決して「退廃と快楽の帝王」ではない。ルー・リードにとってロックとは、常に現実を映し出す鏡であり、彼の歌はそれを赤裸々に見つめたものであった。本作ニュー・ヨークはまさに我々が立ち尽くしている場所であり、彼の歌こそが、現代のロック・ミュージックの真のリアリティーを示しているとは言えないだろうか。

ルー・リードというとどうしてもヴェルベッツの背徳な面に目が行きがちだが、人間のダーク・サイドを描く点はずっと変わっていない。

本作ニュー・ヨークもまたしかりである。現代のアメリカをはじめとする世界のダーク・サイドを描こうとするルー・リードのスタンスは本作ニュー・ヨークにもしっかりと息づいていると思う。







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